ボクたちダイビングショップで働く人間は基本的に長期休みは年に一回。それはすなわち旅行に行けるチャンスが年に一回だけだということ。それはそれは楽しみでしょうがない。

去年の3月から飛行機、宿、ダイビングショップを予約していたその先は『徳之島』!昨年も行っているので、その様子とホエールスイムに関する装備や情報はこちらから。

【クジラと泳げる!】徳之島のホエールスイムに参加してきました

今回はロングフィンを手に入れて、1ヶ月前から船長の特権を活かし、みんなが潜っている間に一人ボートでトレーニングに励んできた。たとえ職権乱用で遊んでいると言われようとも心折れることなくたくさん泳いだ。

こんにちは。お客様からしたら、もしかしたらただ遊んでいるだけに見えるかもしれない船長、トッティです。しかしこれは断じて遊びではない。

今回紹介するレビューは、浪漫を追求したドキュメンタリーである。

ホエールスイム-DAY.1

ホエールスイム待機中

今年もお世話になったのはマリンサービス海夢居主催の徳之島ホエールアドベンチャー。懐かしいこの感じ。クジラが出たらヘリに座って三点セットを装着し船長の合図を待つ。ワクワクドキドキの瞬間だ。

この時期は海が荒れることが多いが、序盤は天気が良かった。この日はよく太陽が出ていて船上でもあまり寒さを感じない。海も凪いでいて期待が高まる。

高まるが午前中は発見したクジラの機嫌が傾いていたのでノースイムで終了。こういうこともあるのがホエールスイム。行けば必ず泳げる訳ではない。

午後は2ペアを発見。スイムできそうなペアに絞ってボートで追跡。しばらくするとクジラが海中-25mで止まったらしく、魚群探知機でその姿を確認した船長からスイムのGOサイン。

海中に留まるクジラ

水面からでも姿は確認できたが遠すぎるので潜って撮影。ダメだ。結構遠い。暗すぎる。

この後、止まっているこのクジラでさらに2スイム。写真では全然撮れなかったけれど、長い時間ゆっくり見れたのでそれはそれで良かった。

初日はこれで終了。午前0頭ノースイム、午後4頭3スイム。

ホエールスイム-DAY.2

海況は良いが天気は曇り気味。港を出て5分でペアを発見。今期最速らしい。ラッキーだ。

そのペアを追っているともうワンペア発見。どちらも親子だが子供はかなり大きい。最初に見つけたペアは不規則な動きでモグラ叩き状態になってしまったので後発見のペアにシフト。

スタッフの凄腕空撮スナイパーが狙いを定める。このクジラたちで勝負。

クジラは水深の深いところ(水面から見えない深さ)で5分〜20分間移動、滞在し、息継ぎで水面に滞在するのが1分〜3分間。

このペアは5分毎に息継ぎで水面に上がっていた。クジラにとって5分毎の浮上はかなり短い。したがって水面滞在時間も短い。水面滞在時間が短いとスイムのチャンスがない。

そこから少しずつ呼吸のスパンが長くなってきて、水中滞在が15分間隔になった。そろそろチャンスだ。と思ったら今度は20分を超えても上がってこない。20分はさすがに長い。ここで考えられることは、

  1. 水中で高速移動をして遠くへ行ってしまった。ブロー(息継ぎの霧吹き柱)も見逃した。
  2. 水中で泳がず止まって息ごらえをしている

しかし、幸か不幸かこの20分間に遠くのほうでブローが上がっているのを発見している。それがこの二択の難易度を格段に上げていた。遠くに上がったブローは追っていたクジラのものという可能性もあるからだ。

しかし船長は”2”を選択。遠くに上がったブローは別のペアだという読み。

水中滞在が20分を超えると海面へ浮上してきた時の水面滞在時間が長くなるらしい。なおかつボートからそう遠くない場所に上がってくればスイムの大チャンスになると船長が言っていた。

ホエールスイム成功!

どんぴしゃだ。

この判断は経験が深くないとできるものではない。経験と確率論とセンス。勉強になりました。いつか宮古島でクジラが出た時に活かそうと思う。

と、冷静に解説しているが、ボク的にはこの距離感での遭遇は、ちょうど一年前、徳之島に来た時の最接近チャンスより近い距離だったので、ドキドキはピーク。

クジラ接近中

向こうから接近してくるパターン。2頭並んで遠くから出現して来た姿は、ミサイルが2発ヌ〜っと飛んでくるイメージ。迫力すげえ。

あの巨躯がなかなかのスピードで近づいてくるので一瞬ゾクッとした。今まさに降りてきた幸運を思うと、なんとも言えない気持ちになる。これがクジラだ。

クジラ最接近

写真ではわかりずらいのだけれど、これで12〜13mの個体。目の前を通過していく時、目ん玉がギョロッと動き、こちらを見ているのがわかった。

写真ではわかりずらいのだけれど、目力は強く鋭い。

2日目は午前4頭2スイム、午後3頭ノースイムで終了。

ホエールスイム-DAY.3

クジラを探すスタッフたち

徳之島クジラ船名物『後方監視』。これ、結構かっこいい。クジラを見つけた時はもっとかっこいい。今度立候補してみよう。

天候が崩れ始めてきた。風が吹き始め、風向きも悪く、沖側は波が高いので沿岸を走って赤ちゃんクジラの親子を探すというプランが発表された。

赤ちゃんクジラの親子は沿岸近くで泳ぐ練習をしたり、のんびりしているのでスイムにはこれ以上ないターゲットだが、反面頻繁に遭遇できるものでもない。

まして、徳之島では今期赤ちゃんクジラの遭遇がまだないとのこと。ハイリスクハイリターン限定出航だ。

8:30スタートで島の1/3を約一時間半かけて捜索。1頭もいない。昨日はワラワラいた海域だ。

折り返し地点で引き返しそれからまた一時間半探したのち、船長から『午前中はあと10分探してダメなら戻りましょう』とコール。諦めかけていたその瞬間、いきなり船のそばで『ブシューっ!!』とブロー。出た。しかも狙っていた赤ちゃんクジラの親子だ。船上がざわつく。

しかしロスト。完全に見失った。通常、赤ちゃんクジラは呼吸間隔が短いので5分おきくらいで頻繁に水面に上がってくるのだが、15分経っても見つからない。ここでまた船長が選択を迫られる。

  1. 沖へ逃げた
  2. さらに内湾へ入った

船長は”2”を選択。赤ちゃんクジラのブローは『ぷしゅっ!』という感じで小さいので見逃しやすいらしい。特に島側の水平線は沿岸のビーチや岩場が背景になるので、背景がシンプルな沖側より見逃しやすい。

出た。島側だ。船長の読みすげえ。

船を寄せると水面アクションをし始めた。ブリーチだ!

親クジラの豪快なブリーチ

迫力が凄すぎる。大型バスが水しぶきを纏い宙を舞う。母クジラが見本を見せ、それを追って赤ちゃんクジラも『ぽよよ〜ん』とブリーチしている。

クジラのアクション:ブリーチ

か、かわいすぎる。。どうしよ。たまらん。

しかも一度や二度ではなく何度も何度も飛んでいる。脇目も振らず相当盛り上がっている。特に赤ちゃんクジラは、ぽよよ〜ん、ぽよよ〜んっと、何度もブリーチしている。

母クジラのブリーチが落ち着いたと思ったら、違うアクションをはじめた。

クジラのアクション:スパイポップ

スパイポップというアクション。水面から顔だけ出し、体を回転させながらゆっくり沈む。周りの様子を伺うアクションだ。伺っているのは間違いなくボクらの行動。スパイポップも何度か繰り返した。

その後、アクションが落ち着いたところでスイムの準備を整える。『さあ行くぞ!!』と気を引き締めていたところでボートからほんの5m横で『ぷしゅっ!』、不意をつかれたが間髪入れずにスイムのGOが出た。

赤ちゃんクジラ

水中を見渡したがどうやら赤ちゃんクジラだけだ。

赤ちゃんクジラは好奇心旺盛なのでボートに寄ってくることはよくあるそうだ。プリン!プリン!と無邪気に泳いでいる。とは言え成牛くらいのサイズはあるので結構早い。こちらも全力ダッシュで少しずつ距離を縮めていく。

前に構えていた一眼レフを一旦引っ込めてギアを上げて泳ぐ。赤ちゃんクジラはもうすぐそこだ。

と、思った刹那、下から異様な気配を感じて視線を落とすと、ボクが泳いでいる真下の水深−10m、母クジラがそこにいた。そのままスーッとボクを追い抜かして行く。ゾクッとした。母クジラがどれだけデカいのか一瞬で理解する。

その光景が衝撃すぎてビクッとしたがすぐにカメラを構え直す。

徳之島ホエールスイム:母クジラと子クジラ合流

来た。我が子を助けに。

クジラが水中で立っているシーンなんて見たことがなかった。ここぞのタイミングで助けに来たことも一連の流れで瞬時に理解できた。

人間の親が危険が迫る一歩手前で我が子に手を差し出すような、そんな感じだ。

これはきっと偶然のタイミングではない。おそらく我が子が好奇心でボートに近づいて行ったところからずっと様子を見ていて、そろそろ行くかという感じで浮上してきたのだろう。

子クジラを守る母クジラ

浮上しきるところで体の向きを変え、赤ちゃんクジラとボクらの間に割って入ってきた。これ以上我が子に近づけさせないために。母クジラのその一連の流れは雄大で美しかった。

その後、母クジラはのんきに泳いでいる赤ちゃんクジラのスピードを合わせてゆったり泳ぐ。

クジラには絶対に触ってはいけないけれど、たとえば手を伸ばしたとしたら確実に届くところに体長15mのクジラがいる。

クジラの真横

超広角レンズでも画角に収まりきらない。身体の質感や傷、寄生しているフジツボ、胸ビレの模様や形もはっきり見える。

これが赤ちゃんクジラがいつも見ている景色なんだろう。母クジラを真ん中に左側に赤ちゃんクジラ、右側にTottyクジラ。包容力と安心感が半端ない。これならどんな海も越えてゆける。

徳之島ホエールスイム

ボクらを少し引き離したところで、少し潜ってグングン加速していく。夢のような時間ももうおしまいだ。ありがとう。

実はこの一連の出来事を納めたムービーがある。スタッフの人たちが撮ったものをお借りした。

真後ろからのアングルだ。10秒のところで母クジラが身体を割り込ませてガードをする仕草がとてもわかりやすい。

33秒のところでは赤ちゃんクジラと母クジラのポジションが平行から上下になるところもこのアングルなら一目でわかる。この動画の一つ前の写真は、上下のポジションなのでこの瞬間のものだとお分りいただけるだろう。

こちらのムービーは潜って下から撮ったアングルで面白い。ボクが撮り逃した母クジラ登場シーンをいち早く察知して潜り、母クジラを中心に捉えている。

10秒から母クジラが浮上してゆくシーンの迫力が凄まじい。

そしてさらにエグいアングルのムービーがあるのだが、それはこの記事の最後ので紹介させてもらう。

午前は『残り10分の奇跡』で終了。

午後は親子ペアの母親をオスが狙ってつきまとうエキサイティングな追跡劇のヒートランに遭遇した。つきまとうオスが2頭いたので計4頭が目まぐるしくポジションを変えながら絡み合っていた。水面でクジラがハーハーしながらひたすら泳ぎ続ける。

スイムでは水中で一度に3頭のクジラが並んで通過していくのが見えた。泳ぎ去るスピードが早いのと、通過していく水深が深かったので写真はなし。

午前も午後も本当にドラマチックな一日だった。

3日目は午前2頭1スイム、午後4頭3スイムで終了。

ホエールスイム-DAY.4

夜中から朝方にかけて前線が通過し、風は暴風、海は大荒れ、雨もザーザーで午前は中止の判断。

午後は雨が止んだ。しかし海は大荒れなのでクジラを捜索できる海域が限られるが、それでも可能性に賭けて出港した。しかし撃沈。

ホエールスイム中止

4日目は午前中止、午後0頭で終了。

ホエールスイム-DAY.5

天候が回復して晴れ間もある。意気込んで出港したが、探せど探せどクジラはいない。昼にスタッフ2名が下船して陸上2点からもクジラ捜索をする気迫を感じる布陣でのぞんだ。

その甲斐あって陸上班からクジラのブロー発見の連絡有り。しかしその時すでにかなり陽が傾いていて、結局クジラを発見できたのは16:00。2群5頭。通常なら港に到着している時間だが配慮のラストチャンス。

ホエールスイムエントリー

慎重に良いチャンスが訪れるまで粘って粘って、最後に少し遠目だが船の真後ろでブロー。そこでエントリーするも遭遇できず、無念のエキジット。

クジラウォッチングボート

5日目は午前0頭、午後5頭でノースイム。

ホエールスイム-DAY.6

天候は雨。ホエールスイムにとって雨は一番の敵。クジラを探す時は水面で派手なアクションをしているのを発見することもあるけれど、基本はブロー(クジラが息継ぎの際に出す水しぶきの柱)に頼る。

クジラの息継ぎ

こう見えて何もない水平線ではよく目立つ。しかし雨が降ったり、ガスがかかってたり、大気に水分量が多い時には遠くのブローは見えなくなる。したがって狭い範囲のみの捜索になってしまうので雨は致命的なのだ。

そうは言っても探すしかない。

出港して2時間が経った時、遠くでクジラがボンボン飛んでいるのが見えた。チャンス到来。船で近づいていくと違うアクションを始めた。

ペックスラップ

ペックスラップだ。胸ビレで海面をペチンペチン!と叩くやつ。それにしてもデカい。5mはある胸ビレを振り回すのだから迫力がある。

この時にスイムで入ると叩かれるおそれがあるのでしばらくペックスラップを見た。さあスイム!と思った頃には早いスピードで泳ぎ始め、断念。午前はここまで。

午後は水深20mに滞在しているシンガー(唄いながらメスのナンパ待ち野郎)を水面からしばらく観察。遠くて暗いので写真はなし。

6日目は午前2頭ノースイム、午後5頭1スイムで終了。

全日程6日間の結果

  • 発見29頭
  • スイム9回
  • スイムできたのは4日間
  • ウォッチングのみが2日間
  • 中止は半日

ボクが徳之島にこだわる理由

徳之島クジラのブリーチ

近年、国内のホエールスイムエリアで有名なのは三箇所で、沖縄本島、奄美大島、徳之島だ。もしこの記事をご覧のアナタがどこに行こうか迷っていたら参考にしてほしい。

徳之島でのホエールスイム、メリットとデメリット

そうは言ってもボクは徳之島でしかホエールスイムをしたことがないので沖縄本島と奄美大島については誤解なきよう言及を避けようと思う。

メリット

  1. クジラを見つけたらマイペースでアプローチできる
  2. 島の大きさが程よい
  3. スタッフの総合力が高い

島で唯一のホエールスイム開催業者であるメリットは、見つけたクジラは全て独占できるということ。時間的にもトライの回数的にもアドバンテージがある。初めて訪れた時はこのメリットに惹かれて徳之島を選んだ。

見ていても色々な判断を迫られる船長にとって、『譲る』という選択肢がないことはもの凄いメリットになっていると思う。クジラを追って観察している時も仮説、実行、検証のサイクルを好きなだけ回せる。結果的に知識と経験がもの凄いスピードで身につく。

ホエール船の船長

ここ数年間で船長の『クジラに寄せる技術』『行動パターンの知見』『読みの深さ』が、目に見えて凄みを増しているとスタッフがこっそり教えてくれた。

島の大きさは結構重要。大きすぎる島は風向きが悪い時に島の反対側まで距離がありすぎて船を回せないことがある。その点で徳之島はぐるっと一周、縦横無尽に駆け回ることができるので悪天候にも割と強い。

最後にスタッフの総合力の高さ。船長は先で述べたとおり間違いない。ただホエールスイムはチームプレイが重要なアクティビティなので脇を固めるタレントも重要。

日本一クジラと泳いでいる男

その点では、元競泳選手のスピードスターが余裕を持ってクジラまで先導してくれたりアシストしてくれる。船長いわく『日本一クジラと泳いでいる男』らしい。経験値も状況判断力もピカイチだ。

実際にエントリー後、クジラがいる方向がわからなくなった時にはまず『日本一クジラと泳いでいる男』を探してついていく。これで何度美味しい思いをさせてもらったことか。

クジラ空撮

続いて『凄腕空撮スナイパー』がいる。ドローンを飛ばす技術と度胸が半端ない。テレビでも見たことがないような凄い映像を撮ってくるし、ある程度の強風でもお構いなく飛ばす。

クジラ空撮

クジラ捜索

空からクジラを捜索することもあるし、クジラの動きを正確に把握することもできる。その情報が船長の行動パターンの知見、読みの深さをさらに深め相乗効果をもたらしている。

『徳之島唯一を実現している優秀な船長』と『日本一クジラと泳いでいる男』、『凄腕空撮スナイパー』がいるから、ボクは安心してホエールスイムと水中撮影に専念できる。

デメリット

  1. 沖縄本島と奄美大島のように直行便が飛んでないのでアクセスが悪い
  2. 単独開催なのでクジラを見つけるのに時間がかかることがある
  3. 他店との連携がないのでチャンスは自力で発見するしかない

アクセスは間違いなく悪い。ただ島の大きさが程よいので午前午後の2開催が基本。着後に昼から乗船もできるし、帰りが夕方の便なら当日の午前中はスイムに参加できる。

単独開催については、見ているとかなりの数の目撃情報が船長の電話に日に何度も届いている。島の知人や友人、応援者からだ。単独開催のデメリットをこういうところでも補っている。

沖縄本島や奄美大島ではスイム確率が高い親子を他店が発見した時にシェアしてもらえる。一隻あたりのスイム回数は少ないが大きなチャンスは一発でモノにできる。ここに関しては大チャンスにマイペースでアプローチできるか、一発の確率を上げるかは、一長一短だ。

一生忘れられない体験

最後はレビューでもなんでもない個人的なことを書こうと思う。

ボクは”クジラと一緒に泳いで写真を撮る”ことが夢だった。

はじめはイルカと泳ぐのが夢で、その夢は宮古島で大いに叶った。何度か一緒に泳げるチャンスが訪れて写真もたくさん撮ることができた。一時間半もの間、一緒に泳ぎ続けたこともあったし、今でも機会があればいつでも飛び込む。

イルカは今では宮古島に住み着いているし、いつしか手を伸ばせば届くような存在になった。

でもクジラは宮古島ではほとんど会うことができない。ザトウクジラの南限は沖縄本島。宮古島にはほとんど来ない。過去に船上から発見したのはたったの3回だけ。15年間でだ。

6年前にクジラをはじめとする大型海洋生物の撮影を得意とする写真家と食事をする機会を友人に設けてもらったことがある。憧れの写真家だった。

緊張して何も話せなかったのだけれども、写真やイルカ、クジラに対する想いを伝えたところ、『これ、よかったら』と財布から一枚の札を取り出してボクに渡してくれた。

トンガのお札(クジライラスト)

クジラの聖地トンガの札だ。この時に”クジラと一緒に泳いで写真を撮る”ことが夢になった。

トンガのクジラシーズンは8〜9月なので、今のボクの力量では店を抜けて行くことは出来ない。そう思っている最中、1月〜3月の間、国内でホエールスイムができるのを知ったのが2年前、初トライが1年前。

1年前は水中で何度も”見る”ことは出来たけれど”一緒に泳ぐ”ことは叶わなかった。思い描いたような写真も撮れなかった。

去年の挫折後、帰ってすぐロングフィンを買って、去年失敗したカメラの設定も次はああしようこうしようと日々考え、あと1mでも50cmでもクジラに近付けるよう1ヶ月前からエントリーとダッシュの練習をして、幸運にも夢叶う瞬間が訪れた。

海に飛び込んだ瞬間からクジラが見えなくなるまで全てがスローモーションになった。目をつぶればこの時の映像はいつでも再生できる。その時、何を見て何を想い、どう動いたのかまで鮮明に覚えている。

”クジラと一緒に泳いで写真を撮る”

海が好きで海の仕事をして、15年間、毎日毎日海へ出て、それでもまだこんなにドキドキできることがある。自分史上最高のドキドキは更新できる。

たぶんこの経験は一生忘れられない宝物になる。

徳之島ホエールスイム

やっぱりボクは海が大好きだ。