ダイビングではタンクに圧縮された空気を吸うことになりますが、近年、海外で普及し始め、日本国内でも広がり始めている最新の技術がナイトロックス、エンリッチドエアです。
ダイビングの世界ではナイトロックスとエンリッチドエアという言葉が混在して使われているため、実は違いがよくわからないという方も多くいるでしょう。
今回はナイトロックスとエンリッチドエアの違いや使用する前に知っておきたいポイントをご紹介していきます。
■ナイトロックスとエンリッチドエアに違いはどこ?
ナイトロックスとは窒素の「Nitrogen」と酸素の「Oxygen」を交ぜ合わせた造語です。
混合比に関係なく窒素と酸素の混合気体全てを指し、ナイトロックスのなかでも酸素濃度が21%を超え、40%以内のものをエンリッチドエアと呼びます。
この2つは指すものが多少違うだけで、どちらの名称が正しいということはありません。
テクニカルダイビングでは大深度での酸素中毒を防ぐため、酸素濃度が21%未満のナイトロックスを使いますが、レクリエーションダイビングではエンリッチドエアを使います。
■エンリッチドエアを使うことで考えられるメリットは?
日本国内でレンタルできるエンリッチドエアは酸素36%の「EANx36」と酸素32%の「EANx32」が主流です。
減圧症のリスクが低くなる、通常のタンクを使ったダイビングに比べて時間的に余裕を持つことができる、休息時間は短くても次のダイビングが可能になるなどのメリットがあります。
海外では、1日に何回も潜れるダイブクルーズ船で提供されるなど、リゾート地などでエンリッチドエアを設置するところが増加してきているのです。
エンリッチドエアは含まれる窒素の割合を抑え、窒素による疲労や体の負担を軽減できるので観光先で行うダイビングでもたくさん潜ることが可能です。
海外と同様に日本国内でも利用が広がってきているエンリッチドエアですが、全てのダイビングサービスを行っている場所で取り扱いがあるわけではありません。
取り扱いがあった場合でも、事前予約が必要な場合もあるので、ダイビングに行く際は前もって確認することをおすすめします。
■エンリッチドエアを利用する前に知っておきたいこと
メリットがたくさんあるエンリッチドエアですが、使用する際には酸素中毒に気をつけなければなりません。
エンリッチドエアは通常のタンクよりも酸素濃度が高いため、酸素中毒を起こしてしまう危険性があります。
「エンリッチドエアを利用すればさらに深く潜れる」と考えるダイバーもいると思います。
しかし、エンリッチドエアを利用したからといってレクリエーションダイビングの最大深度である40mを超えて潜ることはできず、酸素中毒防止のためEANx36では29m、EANx32では34mと、通常のタンクでのダイビングよりも潜れる深度が制限されています。
酸素中毒を起こしてしまうと視覚や聴覚の障害、吐き気やけいれん、めまいなど、様々な症状が出てしまい、最悪の場合は水の中で突然意識を失ってしまうこともあるので注意が必要です。
酸素中毒の危険性を正しく理解して深い潜水は避けて余裕を持った潜水時間を心掛けましょう。
エンリッチドエアを利用したダイビングは、通常のタンクを使って行うダイビングとは違う点があるため、利用の際には事前に講習を受ける必要があります。
基本的には学科講習を受けるだけなので、都市型のダイビングショップでも受講できます。
今回は、ナイトロックスとエンリッチドエアの違いや使用する前に知っておきたいポイントをご紹介しました。
ナイトロックスとエンリッチドエアの利用は酸素中毒に陥る危険があります。
しかし、正しく理解すれば減圧症のリスクを軽減させるなど、メリットの多いものです。
徐々に広がりを見せるナイトロックスとエンリッチドエアを利用する際は、しっかりと講習を受けて安全で楽しいダイビングをしていきましょう。