潜水病は、ダイバーにとって大切な知識となりますので、知っておく必要があります。
スキューバタンクを使用するダイビングでは体に多量の窒素を取り込むため、海上から陸に上がる前にはしっかりと減圧する必要があります。
そこで今回は、潜水病の具体的な症状や減圧症との違いについてご紹介します。
潜水病は命に関わることもあるため、プロのダイバーと一緒に潜る方もぜひ知っておきましょう。
■潜水病とは?
潜水病とは、海中から陸に浮上した時の急激な減圧により、血液中に溶け込んだ窒素が気泡として出てくる疾患です。
ダイビング中に背負うタンク中の空気は、約80%が窒素で、残りの約20%が酸素で構成されています。
多量に窒息を含んだまま陸に上がってしまうと、体に蓄積された窒素が血液の中や細胞内に気泡を発生させ、さまざまな身体的トラブルを引き起こすのです。
潜水病の現象は、振った後の炭酸飲料によく例えられます。
コーラなどの炭酸飲料を振った後にキャップを開けると、急激に泡が飛び出します。
これは高圧化で液中に溶け込んだ多量の炭酸ガスが、キャップ開封時の圧力低下により、急速に開放されたことが原因で起こります。
潜水病が起こる仕組みもこれと同じです。
潜水病は主に10m以下の環境で、長い時間ダイビングをする場合に起こりやすくなっています。
潜水病の発生頻度は1万ダイブあたり2.8とされており、死亡率は10万ダイブあたり1.5~9です。
ダイバーの死因の約3割は動脈空気塞栓症であり、肺胞破裂により空気が漏れることで起こっているため、ダイビングでは要注意の疾患と言えます。
■潜水病と減圧症は同じもの
中には減圧症という言葉を聞いたことがある方もいると思いますが、減圧症は潜水病の別名称とされています。
潜水病は他にも潜函病、ケイソン病と呼ばれており、本やネットなどこれらの言葉で見かけた時は、潜水病とほぼ同じものと考えていいでしょう。
■潜水病の具体的な症状
潜水病の初期症状としては、疲労感や筋肉や関節の痛みなどがあります。
症状が進んでくると体の麻痺、脱力感、めまい、しびれ、呼吸困難などが起こり、重症になると意識不明、最悪の場合は死に至ります。
血管がふさがれることで痛みが発生し、他にも「会話が困難になる」など、様々な症状を引き起こします。
潜水病の症状は脳卒中とも似ていますが、一方でインフルエンザとも似ているため、ダイビング後に体調不良を起こしたときは注意しましょう。
■潜水病のリスク要因
潜水病では、次のようなことがリスク要因となります。
・ダイビング前後の飲酒
・年齢
・ハードな運動
・寒さ
・脱水状態
これらは、潜水病を引き起こす二次的要因の一部です。
ダイビングでは潜水中だけでなく、潜る前の体の状態や潜水後の行動も潜水病に影響してきます。
ダイビングの後に飛行機に乗ることも体内の気圧を減少させることになるので、避けた方がいいでしょう。
また、一日に複数回ダイビングを行うことも潜水病のリスクを高めます。
ダイビングをする時は潜水中だけでなく、事前事後にも気を配るようにして体調を管理していきましょう。
■潜水病の治療について
潜水病の症状はダイビング後早ければ15分、遅ければ12時間後に発症します。
ただし個人差があるため、中には12時間以上経過してから症状が出ることもあるので注意しましょう。
潜水病は本人に自覚がある時もありますが、軽度の場合はサインや症状がすぐに出ないこともあります。
潜水病の治療は酸素投与や再圧治療で行われ、約80%の方が回復するとされます。
万が一、ダイビング中に他の人が潜水病にかかった時は、医療機関にすぐ連絡し、ダイバーは寝かせてください。
緊急用酸素キットを持参している場合には、すぐさま投与するようにしましょう。
ダイビングにおいて発生する潜水病は、誰がかかってもおかしくない疾患です。
潜水病は海から陸に急浮上したことが原因で圧力が下がり、体内に取り込んだ窒素が気泡化することで起こります。
軽度の症状としては疲労感や脱力感などがあり、重度の場合には呼吸困難や意識障害を誘発します。
ダイビング初心者の方は、プロのダイバーの指示を守るようにしてしっかり体を管理しましょう。